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by siwapuri

走ることについて語るときに僕の語ること / 村上春樹

走ることについて語るときに僕の語ること
村上 春樹 / / 文藝春秋 ISBN : 416369580X

レイモンド・カーヴァーが好きで、ついでにカジヒデキも好きな人のブログタイトルみたいだぜ。なんて思わせる、村上春樹の走ることについて語るときに僕の語ること。走ることと、小説を書くことを語った、軽めのエッセイだろうと思わせて、そんなことはなかった。
意表をついた重みと、読み返したくなるような深みを備えた本じゃないか。慎重に言葉を選び、身を削るように、未だかつてないくらい自分自身のことが語られている。

自分について、小説について、走ることについて、そして老いについて。

とくに老いについて向き合っているところがよかった。

もちろん「年だからマラソンをやめました。」とか、「小説を書くのが辛くなってきた。」とかいうたぐいの話ではない。
よく夏フェスなんかで「年なので、野外はきついです」とかいうベテランミュージシャンがいるけれど、そんなふうに思ったことをそのまま口にするような無邪気なノリとは違う。そんなの春樹は嫌いである。僕も好きではない。

だから村上春樹が老いについて語るときも、村上春樹が村上春樹であり続ける限り、自分の一部を切り出す場面に際して、伝えることと守ることの間で葛藤する。そのプライドが心地よかった。確固たるブランドイメージを持った人が、老いについて語るときに漂う決意と緊張感をひりひりと感じる。「少なくとも最後まで歩かなかった。」という言葉にこめられた想いは、いつになくモロに熱い。冗談には聞こえない力強い断定。村上春樹の挑戦は終わらない。村上春樹は村上春樹で有り続けるのだ。春樹さま、この本若者の心にも響きました。よかったです。


※あとがきによると、このタイトルはカーヴァー夫人に許可をとった上で使用しているとのこと。さすが春樹さま。

※古本で1000円(古本にしては高い!)→本棚行き。
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by siwapuri | 2008-03-03 22:44


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