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by siwapuri

天才伝説 横山やすし / 小林信彦

天才伝説 横山やすし (文春文庫)
小林 信彦 / / 文藝春秋
ISBN : 416725610X
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漫才師 横山やすし。それは79年生まれの僕にとって、すでに伝説の人だった。
正味のやすしについては何も知らない後追い世代。
むかしダウンタウンがやっていた「横山やすしのパロディコント」でしか知っていることはなく、ブックオフで100円だったこの本を手に取ったのも、伝説の芸人らしい破天荒な言動に笑えればいいと思っただけであった。

がしかし!!!

横山やすしの伝説は笑いだけでは語れないのだった。後追い世代が横山やすしを知るとき、そこにいるのは編集され美化されたやすしであり、大事な事実が抜け落ちていた。本を読んで印象に残ったのはその抜け落ちた部分。「影のやすし」だった。やすしにとり着いて離れない、笑いとは間逆のどす黒い何か。
闇のあれこれは、どこをきってもきりがなく、面白いというよりは重い。

「なんだかなあ。親御さんのどちらかから、どす黒い何かを受けついた気がするんですよね。何なのかわからないけど」
といったのは、同世代(やすしの3つ下)のたけし。

「多少の事件を起こしても、やすしが許されてしまうのは、彼が負っている影の部分に大衆が敏感に反応するからではないか。」
と語るのは小林信彦。

リアルタイムではやすしの闇は隠されていなかった。というのが後追い世代には印象に残った。
それと、横山やすしが何者かに暴行を受け、言語障害になってしまった謎の暴行事件について、小林信彦の(当時の)推理には胸が熱くなるものがあった。事実(とされていること)よりも現実味のある話に思えた。


本を読んだあと、ふと、小西康陽がマーヴィン・ゲイについて書いた文章を思い出した。
エルヴィス・プレスリーにしてもジョン・レノンにしてもブライアン・ウィルソンにしても、オーティス・レディングにしてもそうなのだか、偉大な歌手というのは、声の中に実に多くの顔を持っている。天使の顔、残酷な表情、ひどく傷つきやすい一面、親分肌、運命的な敗北者の声、神経症的な何か、ただのチンピラ、カリスマ性。こうしたさまざまな顔が、いつも同時に存在していること。それが偉大なパフォーマーの条件であり、そしてマーヴィン・ゲイにはそれがあった。というよりもマーヴィン・ゲイほど「多面性」を強く聴く者に意識させるような歌手はいなかった。
これはそのまま横山やすしにもあてあまると思えた。悲劇的な最後の瞬間までも。
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by siwapuri | 2008-03-08 12:17


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